トンデモ理論

http://www.sankei.co.jp/databox/kyoiku/etc/050926etc.html

 寡聞にして「インテリジェンス・デザイン理論」なるものをこれまで知りませんでしたが、これはまた、典型的なトンデモ理論のパターンであるようです。主張していることが、進化論に対する単なる揚げ足取りにすぎないという点では、「ホロコーストはなかった」「南京事件はなかった」といった類の歴史修正主義と、軌を一にするものであるようにも思われます。

進化論偏向は道徳教育にマイナス 日本の識者も主張

 「人間の祖先はサルだという教育は、生物の授業の仮説ならともかく歴史教育や道徳教育にはマイナスだ」「進化論はマルクス主義と同じ唯物論であり、人間の尊厳を重視した教育を行うべきだ」という議論は日本でも多くの識者から主張されてきた。

 マルクス主義の影響を最も強く受けているとされる日本書籍の中学歴史教科書は平成十三年度使用版まで、見開き二ページを使ってダーウィンの進化論と旧約聖書の創世記、戦前の歴史教科書の日本神話を対比させて聖書や神話を否定的に受け止めるよう誘導していた。

 このような教育に対し、日本神話の再評価を訴えている作家・日本画家の出雲井晶さんは「道徳の上では人間は人間、獣は獣。人間を獣の次元に落とす進化論偏向教育が子供たちを野蛮にしている。誰が日本人を作ったのかというロマンを教えるべきだ」と話す。

 中川八洋筑波大教授は著書『正統の哲学 異端の思想』でダーウィンを批判。創造論、進化論の双方が非科学的だとしても「文明の政治社会の人間の祖先として『神の創造した人間』という非科学的な神話は人間をより高貴なものへと発展させる自覚と責任をわれわれに与えるが、『サルの子孫』という非科学的な神話(神学)は、人間の人間としての自己否定を促しその退行や動物化を正当化する」と論じている。

 最後に、上記の引用の通り、産経新聞が言うところの「識者」達の主張が取り上げられ、産経新聞自身も「トンデモ」であることを明らかにしています。

 それにしても、この渡辺久義京大名誉教授という人物は英米文学を専攻されている方とのことですが、「英米文学者でトンデモ」と言えば、渡部昇一氏を思い出してしまいました。渡部昇一氏も、英語学者としては実績のある人物だそうですが、氏の歴史に関する書物は、まさに「トンデモ本」としか言いようのないものがほとんどのように思われます。
 そういえば、随分以前の話ですが、渡部氏が訳したF・フクヤマの『歴史の終わり』を、私の母校の「西洋史講読」の授業で、翻訳の悪例として使っているということを聞いたことがあります。普通、あのような長期にわたる歴史を扱った大著を訳す場合、複数の人間がチームを組んで訳すことが多いのですが、渡部氏は歴史学者の協力を得ずに単独で翻訳したため、訳語におかしな言葉が使われていることが多いのだそうです。