奇妙な史料分類法 続き

 9月11日のコメント欄で、青龍さんから、「第四次史料」と「第五次史料」とが「坪井九馬三博士の提唱した、時間と場所を基準にした史料分類法」に出てくる「四等史料・五等史料」のことではないか、とのご指摘を頂きました。そして、青龍さんに紹介して頂いた、旧思考錯誤板における史料等級論についての議論も、大変に勉強になりました。
 ところで、「四次史料」で検索してみて、次のような記事を見つけました。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%AD%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%88
ホロコースト (ウィキペディアの記事より引用)
1942年1月20日、国家保安部長ラインハルト・ハイドリヒによってベルリン郊外の高級住宅地アム・グローセン・ヴァンゼーにある邸宅で次官級会議が開催され、「ヨーロッパにおけるユダヤ人問題の全面的解決」について討議された。〜議事録とされる「ヴァンゼー文書」は作者、作成年代、作成場所が判明しないため、歴史学からの観点から言えば、「ヴァンゼー文書」は第四次史料に当たる。よって、ヴァンゼー会議の存在は未だ立証されていない。

また、この記事の参考文献として、以下の2冊が挙げられています。

木村愛二アウシュヴィッツの争点』 リベルタ出版、1995年6月、ISBN 4947637331
ノーマン・G・フィンケルスタイン著、立木 勝訳『ホロコースト産業』三交社、2004年12月、ISBN 4879191582

 どちらも未読なので断定的なことは言えませんが、この記事の多くの部分が、木村愛二氏の著作に依っているもののように思われます。もしも木村愛二氏が「第四次史料」という言葉を使っているのなら、氏はホロコースト否定論者として知られている人物だそうですから、歴史修正主義者の間ではこのような奇妙な史料分類法が広まっているのかもしれません。
 なお、同じく「四次史料」で検索することで、武悪堂さんと全く同じことを述べている記事を見つけました。「教えて!goo 従軍慰安婦と大学教授」というところで、juntという人物がこの奇妙な史料分類法を紹介しており、その部分は寸分違わず同じ文章でした(http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?qid=1183952)。武悪堂さんがこの文章をコピペしたのか、あるいは別のところからコピペしたのかまでは判断できませんが、このようにして歴史学への誤った認識が広まっているとしたら、困ったことです。