君が代や日の丸の強制に関連して思い出すファンタジー小説というと

 個人的には、この作品でしょうか。
 

 TVアニメ版では、事実上の最終回である39話で描かれましたが、ヒロインであり、慶国(異世界の国の1つ)の王となった陽子が、伏礼を廃するという勅令を出すときの台詞は、非常に印象的です(以下の引用は、原作の365〜367ページから)。

「他者に頭を下げさせて、それで己の地位を確認しなければ安心できない者のことなど、私は知らない。
そんな者の矜持など知ったことではない。それよりも、人に頭を下げるたび、壊れていくもののほうが問題だと、私は思う。」

「人はね(中略)真実、相手に感謝し、心から尊敬の念を感じたときには、しぜんに頭が下がるものだ。
礼とは心の中にあるものを表すためのもので、形によって心を量るものではないだろう。
礼の名のもとに他者に礼拝を押しつけることは、他者を頭の上に足をのせて、地になすりつける行為のように感じる」

「無礼を推奨しようというわけではない。他者に対しては、礼をもって接する。そんなものは当たり前のことだし、するもしないも本人の品性の問題で、それ以上のことではないだろうと言っているんだ」

「私は、慶の民の誰もに王になってもらいたい。
 (中略)
人は誰の奴隷でもない。そんなことのために生まれるのじゃない。
他者に虐げられても屈することない心、災厄に襲われても挫けることのない心、不正があれば正すことを恐れず、豺虎(けだもの)に媚びず。
私は慶の民に、そんな不羈(ふき)の民になって欲しい。己という領土を治める唯一無二の君主に。
そのためにまず、他者の前で毅然と首(こうべ)を上げることから始めて欲しい」