靖国参拝問題

 http://www.asahi.com/politics/update/0524/005.html
 「靖国参拝への批判は内政干渉」などいう主張は、およそ論理的とは言い難いです。既に多くの人々が指摘されている通り、A級戦犯極東軍事裁判において有罪とされ、その裁判の結果を受け入れることで日本は独立を回復した訳ですから、そのA級戦犯を「英霊」として顕彰している靖国神社を日本の首相が参拝することは、「内政問題」ではあり得ないでしょう。例えて言えば、ヘスやゲーリングなどナチスの指導者達を聖人として祭っている教会があったとして(この仮定は全く空想的ですが)、その教会をドイツの首相が参拝する、ということが起こったとすると、フランスやポーランドなどナチス・ドイツの侵略を受けた国々の人々がその参拝をドイツの「内政問題」であると考えるでしょうか。
 これは勿論全く馬鹿げた空想で、そんな教会が存在したとしても、そこに参るのはネオナチの人々だけでしょう。しかし、靖国神社の公式HP(http://www.yasukuni.or.jp/annai/index.html)を見てみると、戦犯は「形ばかりの裁判によって一方的に“戦争犯罪人”という、ぬれぎぬを着せられた」人達なので「昭和殉難者」と呼んでいるとのことであり、明治〜昭和の軍国主義時代の戦争すべてをひっくるめて「戦争は本当に悲しい出来事ですが、日本の独立をしっかりと守り、平和な国として、まわりのアジアの国々と共に栄えていくためには、戦わなければならなかったのです」と表現していることからもわかるように、靖国神社には戦争や軍国主義に対する反省は皆無であり、その主張はネオナチの人々の主張と同様のものと言えるでしょう。勿論、一宗教法人である靖国神社がどういう歴史観政治的主張をしようとも自由ではありますが、そういう宗教施設を日本の首相が参拝するのであれば、それが外交問題に発展することは当然のことでしょう。
 ただ、今回の呉副首相のドタキャンは、外交上いかにも非礼であり、なぜこういう対応をしたのか理解に苦しむところではあります。もっとも、靖国問題に関して理を欠いた発言を繰り返してきた小泉首相が呉副首相との会談に臨んだ場合、引っ込みがつかなくなるような失言をしてしまう危険性は大だったかもしれないとは思いますが。