安倍政権が、従軍慰安婦の少女像の撤去を求めている件について

 今日の午後6時過ぎからNHKで放送された「これでわかった!世界のいま」という子供向けのニュース解説番組で、明日の日韓外相会談の議題となる慰安婦問題について解説していたのを観たのですが、ちょっと絶句する程のひどい内容で、特に番組で登場したNHKの記者2人が安倍政権の代弁者となっていたことには呆れ果てる他ありませんでした。その番組については、例えば以下のツイッターでも取り上げられています。
https://t.co/2Fz4MeAjdR  https://t.co/faPFwDXUoO  https://t.co/oETSV4spXY
 報道によれば、日本政府は韓国の日本大使館前の少女像の撤去を求めているそうなのですが、この恥知らずな要求を聞いて、数年前にNHKのBS放送で放送されたあるドキュメンタリーを思い出さずにはいられませんでした。以下は、当時の番組HPの解説文です。

 勇気ある証言者 〜ボスニア〜 

 現代の戦争は、その姿を大きく変えた。国家間の軍隊による戦闘だけでなく、武装グループ、軍閥民兵、ギャングなどが当事者となり、一般の市民が巻き込まれる例も急増している。こうした戦争では、女性がターゲットとなることが少なくない。暴行、略奪、人質、レイプ、子どもの殺害などの被害者となり、肉体的にも精神的にも大きな傷を負ってしまう。しかし一方で、平和と正義を実現するために、女性たちが立ち上がり大きな役割を果たすようにもなっている。

ユーゴスラビア紛争で起きた民族浄化の過程で、多くの女性が組織的にレイプされた。敵対する民族を辱め、その誇りを奪うためだ。ハーグの国際司法裁判所では、旧ユーゴの戦犯が多く訴追されているが、集団レイプについても裁かれた。裁判の中で、ボスニアの女性16人が法廷に立ち、勇気ある証言を行って戦犯を有罪に追い込んだ。
番組では、2人の証言者に焦点を当て、どんな残虐行為が行われたのか、またどのように女性たちが困難を乗り越え、なぜ証言台に立とうと決意したのかを明らかにする。
• 原題:Women, War and Peace I Came to Testify
• 制作:Thirteen / Fork Films (WNET) (アメリカ 2011年)

 このドキュメンタリーの終わり近くで、戦犯裁判で証言した女性たちが被害を記した銘板を掲げるため、集団レイプが起きたフォチャという町に帰るのですが、そこにセルビア人市民たちが押し寄せるという場面があります。
それは、以下のようなものでした。

 ニュース番組のナレーション
「「ダメだ やめろ!」セルビア人市民が抗議します。内戦時のレイプ被害を訴え、銘板を掲げに来た女性たちには、手荒い歓迎となりました」

ニュース映像をパソコンで見る証人
「たった12人の私たちに対し、あまりにも多くの警官がいたことに驚きました。警官隊に道を阻まれ、私たちはそこから先に進むことができませんでした。大勢の人が集まってきていて、危険な状態でした。
  (映像では、セルビア人市民の先頭に立つ女性たちが、親指・人差し指・中指を立てた手をさかんに振っている様子が映されます。なお、ドキュメンタリーの前半では、ボスニア紛争の際にセルビア民兵が同じことをしている様子が映し出されていました。)
 三本指を立てているのは、セルビア人のサインです。女性はこう叫んでいます。「帰れ。もう過ぎたことだ。ここから出ていけ。」
 男性からは、こんなことも言われました。「帰ってくるくらいだから、よほどいい思いをしたんだろう。フォチャでは、お前たちが訴えているようなことは、一切なかった。」
 予定の場所にたどり着けなかったので、その場に銘板を置いて引き返すしかありませんでした。」

ニュース番組のナレーション
「女性たちは罵られ、卵や石を投げつけられました。」

 ニュース映像をパソコンで見る証人
「若い世代のために、銘板を掲げるべきです。当時を知らない子供たちにも、何があったのかわかるように。フォチャだけではなく、ボスニア各地で起きたことをみんなが知るべきです。各地の収容所、監禁場所、すべてに銘板を掲げ、そこで起きた恐ろしいことを歴史に刻むべきなんです。」

戦犯法廷で検事をつとめたヒルデガルト・エルツ=レツラフ
「人々が自分たちの行為を冷静に見つめ、その残虐さを自認できるようになるまで、長い時間がかかるでしょう。私の祖国ドイツを見ても、国民全員がそのような記憶を共有するまでには、何十年という歳月が必要です。あの法廷での判決がきっかけとなって、国民の大多数が過去の出来事を受け入れられるよう、そんな未来が来ることを願います。」

 少女像の撤去を要求する安倍政権や、「これでわかった!世界のいま」に出演していた人々は、レイプ被害者を罵り卵や石を投げつけたセルビア人と同様のことをしているように思われます。このようなことが続く限り、少女像は撤去されるべきではないでしょう。そしてさらに言えば、この歴史的事実を忘れぬために、日本人自身が従軍慰安婦の歴史資料館のような施設を作るべきだと思います。