高野和明『13階段』

 少しだけ読むつもりが、ついつい一気読みしてしまいました。さすがに宮部みゆき氏が絶賛されているだけのことはあって、実に読み応えのあるミステリだったと思います。
 死刑制度のありようについての描写は、賛成・反対の一方に片寄らないバランス感覚が素晴らしく、また刑務官の職務に関する描写は、異様なまでの迫力でした。そして、事件の幕切れが苦いものであったことは、死刑制度という割り切れないテーマを扱っている本作には、相応しいものであったように感じられました。
 なお、事件の真犯人が明かされる場面では、SFミステリの古典的名作『鋼鉄都市』(アイザック・アシモフ著)を思い出してしまいました。